教頭会での発表1

かつて教頭会で発表した原稿を掲載します。

平成15年9月26日
本校の現状と課題
教育改革を着実に

K高等学校定時制教頭

1 本校の現状
(1)生徒の状況
K高校定時制は生徒数30名の課程である。かつては定時制は経済的理由から入学する者が大部分であった。しかし、現在は下表のように、経済的困難の生徒だけでなく、他の高校からの転入・編入の生徒、不登校経験者が多数を占めている。

生徒数(休学を除く) 30人 100%
経済的困難生     8人  27%
転 ・ 編 入 生 7人  23%
不登校経験者数 20人  67%
転入・編入の理由
4年生(男子) いじめによる不登校
4年生(女子) 前在籍高校で人間関係のもつれからいじめられ不登校
4年生(男子) 前在籍高校怠学による欠席多く留年決定 心機一転のため
に転学
4年生(男子) 就職・結婚して順調だが仕事の上で必要な資格を取るため高        卒の資格が必要
3年生(男子) 虐待 中学時不登校、前在籍高校不登校 単位とれず定時制        1年に編入
3年生(男子) 虐待 中学時不登校、前在籍高校不登校 退学して就職、退        職して編入
2年生(男子) 中学時不登校、前在籍高校(全日制)で不登校

 不登校生の多くは中学の時にストレスや人間関係の摩擦があると登校しなくなった生徒である。そのため人間関係が苦手であり、普通摩擦を起こしたりするほどでないことも摩擦の原因になる。授業においても、一斉授業になれておらず、(寺子屋式の)一人一人別のプリントでそれぞれ課題をやるということは比較的よく頑張るが、一斉授業で教師に指名されて答えるということに抵抗がある生徒が多い。
生活指導上での「悪い」ことをするわけではないが、ライフスタイルが大変不適切で神経症的である。そのため絶えずトラブルを起こし、感情をぶつけ合って泣いたりわめいたりすることがたびたびであった。
 教科の学習においても少し難しかったりするとそれが大きなストレスとなる生徒が多い。中学での出席日数の違いが大きいこともあって生徒間の学力差は大変大きい。

(2)職員の状況と指導体制の問題点
 教頭1 教諭5 常勤講師2 非常勤週6時間の養護教諭0.5
① 副任がいない
 13年度に赴任してまず驚いたのは、担任不在のときにそのクラスの担当者がいないことだった。その結果担任不在のときに生徒が無断早退しても指導するものがいなかった。
② 進路指導上の問題点
 12年度末の進路状況は1名アルバイト。それ以外は進路先なしであった。例年ほとんど同じ状況であるという。しかし、それをなんとかしようという意識は職員に見られなかった。もともと不登校生が集まっている本校の実状からすると、進路指導は不可能という認識であった。しかし、学校がきちんとするためには進路保証がきちんと行われなければならない。
③ 生徒の出席状況とその指導上の問題点
 13年度当初の生徒の出席率に驚いた。持っている講座クラスが、毎日毎日一人も来ないという日が続くのである。職員に聞くと「毎年そうですよ」という。生徒の欠席が多いのをほとんど気にしていないようである。また、指導も「欠席が3分の1を越えなければいい」とは言わないものの、生徒は「3分の1までは休んでよい」と考えていて、一日でも多く登校させようという体制にはなっていなかった。
 ④ 生徒の安全確保上の問題点
13年度4月早々に2年生男子が帰る途中で地域の暴走族(準暴力団?)に蹴られて大けがをした。警察にいったん届けたが、親は(お礼参りを恐れてか)被害届を取り下げてしまった。(これで警察署の心証を大変悪くした)生徒の安全確保上問題があることが浮上した。
⑤ 指導力のない教員の存在
生徒がバカにして一切言うことを聞かない、生徒に言うことを聞かせられない教員がいて、指導できず困っていることがわかってきた。
(3)指導体制上の評価できる点
 生徒に深く信頼されている教員が数人いて、絶えず声をかけていろいろ話を聞いて助言していてその点で指導が大いに成果をあげている。
列車の時刻に合わせて1時間目と5時間目に同じ授業をやり1~4時間目を受ける生徒(北から来る生徒)と2~5時間目を受ける生徒(南から来る生徒)に対応している。これはK高校定時制の特徴だが……。
2 考え方
現状分析と基本方針の提示
 本校定時制の現状は、生徒の実態に安易に妥協しているために教育機能不全という状態に陥っていると思われた。
 不登校については、これまで多くの教育理論が不登校の原因を究明しようとしてきた。しかし、不登校には原因があるわけではない。不登校には目的があるのであって、その目的をもとに指導方針を考えなければならないと思う。基本的には不適切なライフスタイルがあり、適切なライフスタイルに次第に切り替えていくことなしに不登校生の指導は不可能であると思われる。
そのために次の指導目標を設定した。
(1)生徒のいのちを守る。
(2)退学者、留年者の数を県平均以上にならないようにする。(15%以下)
そのためには出席率の向上、単位認定の弾力化が必要である。
(3)学力をつけ、進路保証をする。

3 取り組みの概要
(1)指導体制の確立
校務分掌 1、2年の副任、3,4年の副任 1234年の副々任を決める
校内への不審者への対応
危機管理 緊急連絡体制の整備(携帯電話による緊急連絡網)
   (火事だと思って通報したら火事でなかったというのはかまわない)
(2)教員の意識の改革
指導力のない教員の指導 ものの言い方 
仕事をやらせて成功体験→教員の意識の改革
出席率向上、学力保証、進路保証は取り組みによって可能であることに気づかせる。
(3)管理職としての取り組みの手法
職員に考えさせる。
職員から提案させる。
職員の仕事を的確に評価する。 2流を評価しない。
よい監督、悪い監督 よいプレーと悪いプレーの区別
力を長い時間加え続ける。
(力×時間が運動の変化を決める。衝突は派手だが効果は小さい)