3学期制は,生徒の成績分布にどう影響を与えたか

次のレポートは1994年にU高校で二学期制にすべきか、三学期制にすべきかが議論されていたときに、資料として書いたものです。資料ではグラフが入っていましたが、ブログに掲載するにはどうしたらいいかわからず、やむなくグラフなしです。

[リポートの趣旨]
 2学期制だと試験と試験の期間が長くなり、極端な成績不振になった生徒は回復することが困難。3学期制では成績不振者が次の試験で挽回している。

以下レポート

3学期制は,生徒の成績分布にどう影響を与えたか
1994年1月28日

2学期制から3学期制に移行したことは制度上の実験だったと考えます。
その実験結果についてまとめました。
3学期制に移行する際に,「3学期制の方が短い期間で試験ができるので,学習指導の効果があがる」という意見がありました。実際やってみて,どうだったでしょうか。学習指導の効果があがったかどうかどのように判定したらよいのでしょうか。
テストの点が平均点の半分以下しかとれなかった生徒は相当な成績不振といえるでしょう。そこで平均点の半分以下しかとれなかった生徒が何人いたかを調査して,2学期制の頃と3学期制になってからで,差があるかどうかを見れば,2学期制と3学期制の生徒の学力に及ぼす影響がわかるかもしれません。そこで,2年生の授業で平均点の半分以下しかとれなかった生徒がどのくらいいたか調べてみました。

[問題1]
《2学期制の第3回の一斉考査での平均点の半分以下の生徒数》と,《3
学期制になってからの2学期期末考査での平均点の半分以下の生徒数》で
は差があったでしょうか。
予想
ア,3学期制の方が成績不振者がずっと少ない。
2学期制の頃の半分以下
イ,3学期制の方が成績不振者がずっと多い。
2学期制の頃の2倍以上
ウ,ほぼ同じ。

調査の結果
平成4年度の2年生の物理の2講座(γ,δ講座)で72人中21人が平均点の半分以下でした。29.6%が成績不振者ということになります。
平成5年度の2年生の物理の2講座(α,γ講座)で89人中平均点の半分以下は0人でした。
しかし,これは特別かもしれません。

平成1年~4年までの平均点の半分以下の人数を調べてみると、
平成1年度85人中5人
     5.9%
平成2年度40人中7人
17.5%
平成3年度41人中4人
9.8 %
平成4年度72人中21人
29.6%
4年間計238人中37人
平均 15.5%
平成5年度 90人中0人
        0%
でした。
これをみると年度によって成績不振者の割合は相当の違いがありますが,平成5年度のように0という年はありませんでした。


[問題2]
 2年生は特殊かもしれません。3年生で比べてみたらどうでしょう。
3年生では2年生と同じように,3学期制の方が,成績不振者の割合が少
ないでしょうか。それとも3年生は違うでしょうか。
予想
ア,2年生と同じ傾向
イ,3年生の場合2学期制も3学期制も成績不振者の割合は大差ない。
ウ,3年生の場合,3学期制になってからの方が成績不振者が増えた。
調査の結果

平成4年度の3年生 75人中 7人 9.3%

平成5年度の3年生 72人中12人16.7%

すなわち,3学期制に移行してからの方が成績不振者が増えています。
しかし,これは特別かもしれません。過去4年間にわたって平均してみたらどうでしょう。

平成1年度の3年生 46人中 8人 17.4%

平成2年度の3年生 88人中22人 25.0%

平成3年度の3年生 83人中23人 27.7%

平成4年度の3年生 75人中 7人 9.3%

4年間合計と平均 292人中60人平均20.5%

平成5年度の3年生 72人中12人 16.7%

4年間の平均と比べると今年の3年生は成績不振者は少し減りました。しかし,この程度の違いは「大差ない」という見方もできるかもしれません。
「3学期制では考査と考査の間隔が狭く,狭い範囲で試験することで,一回成績不振になった者も次回に挽回できるからよい」という意見がありました。「2学期制では考査の範囲が広いので考査で一度悪い点を取ってしまうと次回の考査で回復するのは容易でない」というのです。
今年3学期制に切り替えてから,《考査で悪い点を取った生徒》は次回の考査でどの程度挽回できたのでしょうか。2学期制のときと,3学期制になって
からで,差があるでしょうか。

[問題3]
平成5年度の3年生の物理の講座で2学期の期末考査で平均点(41点)
の半分以下の生徒は72人中13人でした。この13人は次回の学年末考
査で挽回することができたでしょうか。
成績不振者13人の成績の推移

2学期期末考査 学年末考査

学年全体の平均点 41.3点 73.7点

13人の平均点 10.7点 → ?

この成績不振の13人の平均点はどうなったでしょうか。学年末考査
全員の平均点は73.7点でした。
予想
ア,大幅に上昇した。(平均点の半分の37点より15点以上高い)
イ,かなり上昇した。(平均点の半分の37点より1~14点高い)
ウ,少し上昇した。(平均点の半分の37点~25点)
エ,ほとんど変化しなかった(平均点の1/4程度の15~24点)
オ,むしろ下がった。(平均点の1/4以下の14点以下)


調査の結果
2学期期末で成績不振だった13人の生徒の次回での考査成績の推移

2学期期末考査 学年末考査 2学期期末考査 学年末考査

10 → 56 8 → 44

8 → 64 17 → 50

15 → 70 16 → 62

20 → 80 10 → 0(欠席)

17 → 70 0 → 54

6 → 74 4 → 46

8 → 44

●平均10.7→54.9
平均点の半分より18点高かったのです。すなわち,アが正しかったことになります。平成5年度には本校では極端に悪い点を取った生徒の大部分は次回の考査で挽回しているのです。
それでは,2学期制最後の年である平成4年度の3年生ではどうでしょうか。

[問題4]
平成4年度の3年生の第3回一斉考査の平均点は56点でした。この半
分以下しかとれなかった生徒は7人でした。この7人の平均点は24.1
点でした。
成績不振者7人の成績の推移

第3回一斉考査 第4回一斉考査

学年全体の平均点 56点 42点

7人の平均点 24.1点 → ?

この7人は第4回の一斉考査で平均何点とれたでしょうか。第4回の一
斉考査の平均点は42点でした。
予想
ア,平均点の半分の21点よりずっとよかった。(15点以上高い)
イ,平均点の半分の21点より少しよかった。(1~14点高い)
ウ,平均点の半分の21点くらい。
エ,平均点の半分の21点よりずっと低い。


調査の結果
成績不振者7人の成績の推移

第3回一斉考査 第4回一斉考査 第3回一斉考査 第4回一斉考査

28 → 22 28 → 27

24 → 15 20 → 6

20 → 30 22 → 30

27 → 18

●平均 24.1→ 21.1

すなわち,平均点の半分ですからウが正しいのです。成績不振者は次の考査であまり挽回できなかったのです。要するに2学期制の時は,成績不振者は次回の考査で挽回できなかったけれど,3学期制になってからは,成績不振者は次回の考査で挽回できる場合が多いということになります。

以上は物理の成績から見た,2学期制と3学期制の学力不振との関係を考察するための調査です。結論として,
①2学期制より3学期制の方が極端な成績不振者の数は少なくなる。
②2学期制より3学期制の方が,悪い成績を取った生徒が挽回できる余地がある。
ということが言えるように思われます。
各教科で,上記のような統計的な調査をして,意見を出されることを望みます。
成績処理の時間的余裕が必要という意見はそのとおりだと思います。しかし,夏休み前に成績を出して,三者面談をしておくことは必要だと思います。12月の面談は特別な生徒を別として不要。7月に面談がとれるように年間計画を立てるべきだと思われます。
最近は大学も試験の回数を増やしているのに本校が2学期制に戻るのには反対です。