学力を考える研究会2

正しい現状分析をもとにした方針とは何か

 1年生は前期は楽しそうにしているが、秋から下を向いて歩いている。入試でほとんどの生徒が英語で90点以上とって入ってくるのに、4月末の試験では最高点94点、最低点4点というほど差がついてしまう。そしてこの1桁しかとれない生徒は、実質的に授業がほとんどわからないまま、自分でも「やらなければ」と机に向かってみたりするのだけれども、どうにもならないまま、1年間を過ごし、成績認定会議で不認定になりそうということで、補習やレポートで死にものぐるいでやって何とか、2年に進級するというパターンなのである。そして、あれほど進級できないかもしれないと思ったのに進級できたということもあるのか、「今度こそ」と思ってもますます難しくなる授業に全くついていけないことによるのか、またしてもやる気をなくしてしまうのである。3年生の秋11月になってから勉強を始める。これがU高校で学習がうまく行かない生徒のパターンである。3分の1から見方によっては半分くらいの生徒がこの状態に該当するように思う。これは生徒がやる気がないからだろうか。生徒がだめだからだろうか。

 こういう状態はどうすれば変えていくことが出来るのだろうか。変えることは無理なのだろうか。
 U高校の学力を上げていくためには、ものすごい受験体制を作る必要はなく、その前にやれば成果が上がると考えられることがたくさんあることに気がついたのである。それは何だろうか。
 「出来ない生徒は1年生2年生の間はほとんど勉強していない」のである。勉強するにもしようがない状態になっているのである。これを1年2年から勉強するようにするだけで学力は飛躍的に上がるはずである。そのつもりで、いろいろの教科の先生や生徒の話を聞いてみると、生徒がいかに授業と無関係の状態になっているかは驚くほどのものであることに気づいたのである。ある教科の先生は、3年生で授業を聞いているのは5人程度だと言う。「他の生徒は何をしているのか」と聞くと、「授業がわからないので、授業でやっているのと違うもっと易しい問題集を自分でやっている」と言う。
 ある先生は、生徒に教科書の問いなどを当てると、ちっとも出来ないので授業が進まない。だから、自分で問いをみんな解いていくという。
 これは自分の授業も含めて反省し、改良すべきことがたくさんあると感じた。まず、生徒が授業に参加するような工夫が必要である。生徒が授業を中心に勉強するようになれば、学力をずっと伸びるはずだ。

公開授業の感想(口頭発表)

 そうだとすれば、「学習の方法を教える。」「1年の最初によいスタートが切れるような指導をする。」「学習する意義を教える」という方針がでてくる。

 2回の担任で、こうしたことを指導の核にした。

1.学習の方法を教える。―――授業をよく聞く指導

 U高校に赴任して聞いた話「U高校の生徒だから出来るだろうと思って難しいことを教えて、テストをやってみて出来なくてがっくり来る先生が多い」最初のテストの前に教えたことは、授業中の反応から見て平均点90点くらい行くのではないかと思ったが、やってみたら50~60点くらいだった。生徒は静かにしているから聞いているかと思ってしまうが、実際はわからなくても静かにしているだけで、わからないことが続くと授業を聞かなくなる。聞いていない授業は何時間やっても力はつかない。
 生徒の学力をつけるために必要なことは、普通にいわれるように、家庭学習時間を増やすように指導することでなく、まず授業をよく聞くように指導することであると考えた。
 上田高校の授業に限らず、ほとんどの学校で生徒は実際には授業を聞いていない。半分くらいの生徒しか聞いていないというのが私の予想である。これをまず、授業をきちんと聞くようにするだけで、学力ははるかに上がるのである。

 最初のクラスを持ったとき、方針として、1年の最初から、高校の授業に普通についていく程度の勉強をさせていけば、現状よりはずっとよくなると考えた。実際大きな成果を上げたと思う。

また、自分の物理の授業についても次のような工夫をした。
◆問題集を従来より易しいものにする。(重要問題集→リードα)
定期テストは出来るはずの問題を出す。(平均点100点でもかまわない)
  50点分は授業を受けている限り必ず出来るはずの問題。40点分は標準問題、10点分は難しい問題
◆1時間の中で、基本例題を1問説明する。
  習ったことを使う。また、問題のとらえ方、考え方がシャープに浮き出る問題を扱い、解答に至る前の考え方を説明する。「入試に出る」という話はしない。しかし、入試に出る問題のパターンは基本例題に織り込む。
◆私個人は仮説実験授業をやる。(常識的には受験にマイナス、しかし、マイナスでないと主張、実際はプラス)

物理の出来はどうだったか。(口頭発表)
くる前
1年目
2年目
8年目
物理はU高校の生徒にとって点を稼げる教科になっている。