生徒に言うことを聞いてもらえない先生

 仮説実験授業は対立物の相互浸透をうまくやっていますよね。ところが生徒の意見を聞くということだけを強調してしまうと、生徒に「何を教わりたいですか」と聞くというスタイルでやったとするとだめですね。上廻さんという支配と統合がしっかり出来る先生が仮説実験授業を初めてやったんで子どもに聞くということの大事さことを強調するけれど、その前に彼は言うことを聞かせるということをしっかりやっていた。そういう大前提がある。ところが最近、学校全体が生徒にアンケートとるとか、生徒に聞けというスタイルが上から下りてきて、生徒に聞くというスタイルになってきているんです。つまり、最近は支配と統合なしで生徒に聞くということになってきているんですが、クラスの生徒がまったく言うことを聞いてくれないという優しいいい先生はどうしたらいいんですか。
 優しいいい先生はやっぱりちゃんと共通の生徒も納得できる約束を生徒との間ですべきですね。それは先生の方で選ばなければいけない。生徒がしたらだめです。
 最も愚劣でけしからんというのは生徒手帳に書いてある学校の規則を生徒にこしらえさせるというヤツです。生徒を尊重してように見えますが、このくらいけしからん話はない。生徒にこしらえさせたらどんな教師も思いつかないような重箱のすみを突っつくような規則を作ります。しかも、生徒達はそれを作ったのは自分たちですからそれを厳格に守らせようとします。厳格すぎる法律を作れば違反者を作るだけですから、違反者だらけになります。必然的に真面目な生徒ほど仲間を密告する生徒になります。こういうことをやっちゃあいけないんです。子どもには「何か決めない方がいいこともある」という人間についての知恵はないんです。それを持っているのは大人なんですから、良識のある大人が決めればいい。