自発性の組織論

生徒の主体性を尊重すると言うと、実際教室では成り立たないんだよ。勉強に対する自発性を生徒の中に組織するんでなければ、授業は成立しない。そのために教師は何をしなければならないかという話になる。生徒が自発的な関心を持てるような問題を提起しなければならない。考えるに値しないというものを考えるはずがない。どういう問題を与えるかが重要です。
 そのとき、生徒からいろんな考えが出て来る。そのいろいろな考えを組織する方法、段取りをどう作っていくかという問題なんです。仮説実験授業というのはその段取りをこしらえたんです。だから、自発性が組織できる。だから勉強が楽しくなるんです。主体性に任せていたら誰が勉強しますか。学校で教わることなんて何も知らなくても生きて行くには何も困らない。
 主体性を尊重をするとうまくいかないということはみんなわかってきた。戦後の教育は主体性を尊重するからいけないという主張もある。僕に言わせれば、本当の戦後の精神は自発性の尊重なんです。戦後精神は自発性を持ったということなんです。俺の目で世の中を見届けるためにはいろいろな知識がいるから、いろいろな本を読んだりするけれど、その本に従って考えるために読んでいるんじゃない。俺が自分の頭で考えるための材料として読んでいる。読んで必要ないと思えばどんどん捨てる。自発性に従って本を読めばそうなります。そうじゃないと本を読むために本を読む。これじゃあだめですね。