国立教育研究所研究集録第4号

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 板倉聖宣さんと永田英治さんの共著の論文が掲載されています。1982年3月発行です。「明治期学校教育の定着過程に関する数量的研究(Ⅰ)──近代的内容教科の開始と定着」という論文です。明治期の学校教育では就学率、出席率についての研究がされているが、その数値だけで明治期の小学校の実態をイメージするとイメージと実態が著しく違いかねない。明治9年に下等小学校第8級(今で言えば小学校1年)に在学していたのは107.4万人いたのにその後の3年間で順調に進級したのは5%以下だったという驚くべき結果が明らかになった。このことからすると、「学制の科学教育の構想は日本の小学校教育の実情にそぐわなかった。」という議論は議論倒れで、「ただ小学校上級に進む生徒がいなかっただけ。」ということになる。小学校上級(今の小学校5年)に進んだ者は明治9年で1.6万人、明治12年で4.3万人で現在の大学院生より少ない人数である。この論文はその続編が「明治期学校教育の定着過程に関する数量的研究(Ⅱ)──小、中学校の卒業生の増大と科学教育」という論文です。永田英治さんは当時定時制高校の先生で、都立大学の大学院生だったことが書かれています。
 板倉聖宣さんの数量をグラフ化するノウハウが駆使されている論文です。