推薦図書(続)

『原子論の歴史』上・下 板倉聖宣著 仮説社 各1890円(高~難)
 これまでも近代科学成立に原子論の果たした役割は強調されてきた。しかし、これまで指摘されてきた以上に原子論の果たした役割の大きいことを明らかにした本である。
『模倣の時代』板倉聖宣著  (高~難)
  明治という時代、日本はヨーロッパやアメリカの科学・技術・思想・制度を取り入れようと躍起になっていた。医学では森鴎外がドイツに留学し、近代医学を日本に持ち込んだ。森鴎外のやろうとしたことは、ドイツ医学を徹底的に模倣することだった。これは非常に大きな成果を挙げた。ところが脚気という病気があった。これはドイツにはない病気で、しかも毎年数万人が脚気のために死亡するという大変恐ろしい病気だった。これはドイツの医学の模倣によっては解決できない、日本人が自分たちの力で是非とも解決しなければならない問題だった。すなわち模倣の時代に創造性が求められた問題だったのである。いかなる人間が創造性を発揮し、いかなる人間が創造性を妨害したかについて、息もつがせず読んでしまう迫力満点の本である。当時は模倣の時代だった。では、現代はどうであろうか。現代は日本の歴史の中でこれまでなかったほど創造性が求められている時代である。
創造的に生きるにはどうすればいいかについて示唆するところの大きい書である。
『物理学入門』武谷三男著 季節社 1575円  (高~難)
  岩波新書として書かれたものの復刻版、力学を中心に記述、電磁気学分野が書かれずはずだったが、書かない内に著者は他界した。
『科学入門』武谷三男著 勁草書房 2520円(中~高)
 パスツールの自然発生説の検討、ケプラーケプラーの法則に到達するまでを中学生にもわかるように書いたもの。実際は中学生では難しいかもしれない。
『身近な発明の話』板倉聖宣著 仮説社      1400円(易~高)
 石灰、こんにゃく、電磁石などの身近なものの発明の話。読みやすく大変楽しい読み物である。
『数量的な見方考え方』板倉聖宣著 仮説社 1700円  (高)
 数量的な見方考え方を身につけると何が見えてくるか。概数の哲学は必読
福翁自伝岩波文庫
 福澤諭吉の自伝。福澤諭吉というと文系の人間と思われているが、当時は文系・理系という区別などなかった。福澤諭吉は『窮理図解』という本を書いているが、窮理というのは今で言う物理のことである。彼は日本人がものの見方考え方をきちんと身につけるためには西欧の物理学の考え方を学ぶ必要があるとして、物理学を一般の人にもわかるようにするための本を書いた。それが『窮理図解』である。この自伝は福澤諭吉緒方洪庵の塾に入ってオランダ語を学んでいく様子が生き生きと描かれている。とりわけ時代の変わり目に生きた人が何をどのように学んだかについて知ることができる貴重な本である。現代が時代の変わり目であることを考えると、多くの示唆に富んだ本である。幕末とは何か、明治維新とは何か、勉強とは何か、を教えてくれる本である。