物理の歴史

毎日新聞社から『物理の歴史』という本が出ていてとてもいい本だ」と聞いて学生時代に何とか入手しようとしたけれども入手できなかった本がちくま学芸文庫から出された。巻末に江沢洋先生がこの本の思い出を書かれている。この本は1953年に出され、よく売れたというが、なかなか古本屋に現れず、あきらめた本である。古本探しはある時期には相当力を入れ、探求書の広告なども出したので、古本屋に出れば入手できたと思われる。この本は一般向けの本なのに、買った人がなかなか手放さなかったということだろうか。「量子論」のところを拾い読みしたけれどおもしろい。この本の書き方が発展して朝永振一郎著『量子力学ⅠⅡ』になるのだという。当時の物理学者たちの熱気を感じとれる。夏休みに熟読したい本である。
ちくま学芸文庫からは、今となっては入手できなくなっていた名著が次々に出版されている。どれもおもしろい。森毅著『現代の古典解析』なども出ている。高木貞治著『数学の自由性』も出ている。カントルの主張した「数学の本質はその自由性にあり」という言葉も、高校生の頃カッコイイとは思ったもののその意味はわからなかった。その意味が明確に書かれている。また、藤森良蔵や田島一郎との交流、やその雑誌に寄稿した文などなかなかおもしろい。この本も夏休み中に熟読したいと思っている。小西甚一の『古文の読解』も出ている。私は高校生のとき小西甚一の『古文研究法』で勉強したが、『古文の読解』も拾い読みしてみるとなかなかおもしろい。漫談のようでいて要点をきちんと押さえた説明には感心する。
ちくま書房はどういう読者を想定してこのシリーズを出しているのだろうか。ひょっとしたら私のような定年後の人間対象かも知れない。