力×時間

2001年の夏休み前全校集会講話

ストローとマッチ棒の実験

 ここにストローがあります。マッチ棒を入れて吹くとこのようにマッチ棒が飛んでいきます。マッチ棒とストローの吹き矢です。
 この吹き矢のスピードを速くするにはどうしたらいいでしょうか。もちろん思い切り強く吹けば遠くまで飛んでいきます。同じ強さで吹いたら、マッチ棒を手前に入れた場合と先の方に入れた場合でどちらが遠くへ飛ぶでしょう。
やってみせる。

これは口元にマッチ棒を置くとマッチ棒がストローから飛び出すまでの時間が長くなり、長い時間息で押されるためにスピードがどんどん上がるのです。
多くの人はスピードを速くするには大きな力が必要だと思っています。ところがスピードを大きくするのは
力×時間
という量なのです。多くの人は力が大切だと思って力を入れようと努力しますが、力を加えている時間が大切であるとはなかなか思いません。ですから、ストローを2本つなげて長くしてやると息に押される時間がもっと長くなるのでもっと速くなるということになります。やってみます。

2本のストローの方が遠くまで飛びますね。

4本ではどうでしょう。ますますスピードがでます。

8本では

これはもう危険なくらいです。
 スピードを決めるのはこの力×時間という量であることをよく覚えておいてください。
 勉強でも仕事でもその成果がどのくらい上がるかを決めているのは力×時間なのです。多くの人は力だけが大切と思っています。だから思い切り力を出して、それでもあまり動かないのであきらめてしまいます。それは非常に短いストローで力を入れて吹くのと同じなのです。成果を上げるには時間が必要なのです。この時間の方は長くすることが出来るのです。

スポーツにおける力×時間

 こういう話をある先生にしましたら、その先生は高校時代野球部でピッチャーをやっていたのですが、こういう話をしてくれました。
 高校の時監督に「球を出来るだけ長く持ってキャッチャーのミットに出来るだけ近いところではなせ」と教わりました。この教えは要するにボールに力を加えるとき大きい力を加えることだけ考えていてはだめで、長い時間力を加えなさいということだったんだと今わかった。
というのです。
 実際オリンピックのやり投げや円盤投げの選手を見ていると地面のすれすれから出来るだけ長い時間やりや円盤に力を加えるようにしていることに気がつきます。われわれが投げるときにもそのまねをすると遠くまで投げることが出来ます。

ボールを投げる距離が男子と女子でなぜこんなに違うか

 男子と女子が野球のボールを投げるとその飛ぶ距離がすごく差があるのに驚きます。男子と女子では高校生では力は3倍くらい違いますから男子の方が遠くまで飛んで当たり前ですが、その力の差よりももっと飛び方に差があるのです。小学生では力の男女差はほとんどありませんが、ボールを投げさせるとすごく差があります。どうしてでしょうか。
 ある小学校の先生がボールを投げるところをビデオに撮って調べました。すると、女子はボールを押している時間が短い。だから飛ばないのです。男子はなぜボールを長く押しているのでしょうか。その先生が聞いてみたところ遠くまで投げられる男の子はプロ野球の選手にあこがれる子が多く、そのフォームをよく見てしょっちゅうまねしているのです。プロ野球のピッチャーの投げ方はボールを押す時間が長くなるような投げ方です。だから速い球が投げられるのです。それをまねしている男の子たちはいつの間にか正しいフォームで投げていることになるのです。だからプロ野球に興味がなく、そのフォームをまねしたりしない子は男の子でもボールを投げさせると遠くまで飛びません。

まねの大切さ

 われわれは模範となる選手のまねをすることで、正しいフォームを身につけることが出来るのです。まねすることが出来るのはボールの投げ方だけではありません。勉強の仕方も、ものの見方考え方も、生き方も模範となる人のまねをしている内に知らず知らずの内に身につけることが出来るのです。誰のまねをしたらいいか。これは一流の選手のまねをするのがいいのです。人生においてみなさんがだれのまねをしていったらいいか、それを判断するのは自分です。
 しかし、ヒントを言うならば、みんなが毎日教わっている先生方がいるではありませんか。また働いている人は職場に「この人のようになれればいいな」と思うような尊敬できる先輩や上司がいるのではないですか。さらに生きている人ばかりでなく、読書を通じて過去のすぐれた考え方をした人、すぐれた生き方をした人を模範とすることが出来るではありませんか。

勉強も 授業中の努力×授業に出た時間

実は毎日学校に来て授業を受けるということは、その時その時には自分が進歩したという実感があまりないものですが、長い間にはすばらしい進歩をしてるのです。授業を受けるというのはこの力に相当するところです。そして4月から7月までの4ヶ月間という時間がそれにかけ算されたものがみなさんの実力として身についているのです。授業によく出た諸君は、自分のこれまでの4ヶ月に自信を持ってください。そしてこの4ヶ月が夏休み後もどんどん続いていけば、ますます実力が身についてきます。欠席が多くなってしまった人も、みなさんには時間がたくさんあります。若いということは自分の持ち時間がたくさんあるということです。これからでも遅くありません。勉強に時間をかけてください。
 力は普通程度でもあるいは普通以下であっても長い時間力を加えていれば、マッチ棒はいくらでもはやくなりました。同じように、みなさんが努力するその程度はねじり鉢巻きで命がけで勉強するということでなくても、普通にやっていても時間さえかければその結果驚くべき進歩が約束されるのです。多くの人は時間が大切と思わず、その場で大きな力を出すことばかり考えています。ストロー吹き矢をどんなにがんばって吹いても短いストローではマッチ棒ははやくなりません。楽に吹いても時間さえかければすごいスピードになります。時間をかけることこれが大切なのです。

 今日の話は勉強についての話でした。勉強で大切なことは勉強にかける時間であるということ、そしてプロ野球の名選手のフォームをまねするように、勉強でもすぐれた考え、すぐれた生き方をした人のまねを徹底的にする、そこから自分独自の考え方というものも出来上がってくる。まねをすることが勉強であるという話をしました。
この夏休み、それぞれ計画を立てて気張らなくていいですから、意義あることに時間をかけるようにしてください。終わります。