古代ギリシャの原子論は空想的か

古代ギリシャの原子論は空想的なものであって実験的に裏付けられたものではない。」というのが科学史家の共通認識だと言います。板倉さんは古代ギリシャの原子論も実験的に裏付けられていると主張しています。『原子論の歴史』科学史学会の多くの人は板倉さんの見解に冷ややかです。ところが、『すごい物理学講義』カルロ・ロヴェッリ著 河出書房新社2200円 という本があることを宮地祐司さんに教えてもらいました。この本を読むと、「古代ギリシャの原子論は証拠も空想的な理論であって、科学とは言えない」という主張が間違いであることが書かれています。ルクレティウスの文章は、ブラウン運動についてのアインシュタインの論文と同じことを言っているのです。
 宮地さんは言っています。「古代ギリシャの原子論は空想的なものだ」というのは、もしかしたら日本でだけで言われていることなのではないか。」
もしそうならと思い、「古代ギリシャの原子論は空想的なものだ」という主張を最初にしたのは誰かということが問題になります。
それを調べています。
調べているうちに別のことが目にとまりました。岩波新書の『ギリシャ人の科学』上下です。とても古い本ですが、その上巻の79ページにエンペドクレスのやった実験が載っています。その実験は空気は物質であることを示す実験で、やっていることは、授業書《空気と水》の実験と同じ「コップを逆さまにして水の中に押し入れても水はコップの中に入ってこない」という実験です。
ここから2つのことが言えます。古代ギリシャの科学者も実験をしたということ。それから、授業書で取り上げられている実験は科学史上の実験であるということです。
古代ギリシャの科学者がやった実験についてはさらに調べてみたいと思います。また、科学史を調べていくと、授業書づくりのヒントになる実験を発見出来そうということで、さらに科学史を研究する強い動機付けになりました。
とりあえず、中間報告です。