新年会挨拶

今年の新年会で幹事長挨拶をしました。以下挨拶です。挨拶の場を借りて、仮説実験的認識論の広がりを宣伝しました。
 明けましておめでとうございます。当番幹事を代表してご挨拶申し上げます。
新年は哲学の季節
 新年はものごとを根本的に考えてみたり、大風呂敷のことを考えてみたりする絶好の機会ではないかと思います。
 私は年末にある研究会に参加してきました。そこで聞いた話をご紹介したいと思います。
教育特区の実験
 東京都の羽村市では教育特区の指定を受け、理数フロンティア校として、指導要領にとらわれない教育を始めているということです。その手始めとして小学校低学年から原子・分子を教えるという取り組みをしています。はじめは「中学生や高校生でも難しい原子を小学校で教えるなんて無理だ。」という意見が多かったそうです。
 しかし、このようなすべてのものは原子・分子からできているという基本的なことはできるだけ小さいときから親しんでおくことが望ましいし、基本的であるからこそ、子どもたちの興味をかき立てることができると考えられます。それに、仮説実験授業という授業では、これまで既に小学生に対して原子・分子を教える授業が成功しているという研究の積み上げがあります。この研究を引き継いで小学校で授業したところ、子どもたちはこの授業を大歓迎し、多くの子どもたちがもっと原子のことを勉強したいといったそうです。教育特区の指定を受けて、指導要領から自由になることで、新たな挑戦をして大きな成果を挙げることができたということでした。
 
世界の教育学者が日本の仮説実験授業に学んでいる
 新年には別の研究会に参加してきました。
 東大の齊籐萌木さんという新進気鋭の教育学者の研究によると、世界的にコラボレイティブ・ラーニングという考え方が普及しつつあるということです。これは協調学習と訳されています。協調学習というと「グループ学習でリーダーのいうことを聞いて動く人間を育てる教育」というイメージを持つ人もいるようです。しかし、この協調学習という考え方のもとにあるのは、世界の教育学者が「仮説実験授業において、科学を夢中になって学んでいるときの子どもの姿のような学習が、人の学習の本来の姿であるべきだ」という考え方をするようになり、それがもとになって出てきた言葉であるということです。要するに、日本で50年前から研究されていたことが最近ようやく世界の教育界の風潮になりつつあるということなのです。

 アメリカの教育学者のいうにはアメリカの中学生や高校生は討論がうまくできず、日本では仮説実験授業という授業で生徒がよく討論しているそうだがどうすれば討論できるようになるのかということで日本の授業を視察にきているというのです。これは私が若い頃から聞いてきた「アメリカ人は討論が得意だが、日本人は討論がへただから何とかしなければならない。」という考え方に大いに疑問を投げかける事実であります。こうしたことを知ると、私たちは知らず知らずの内にいろいろな思い込みにとらわれて、発想の自由を失っているのではないかと反省させられます。
 思わず大風呂敷の話になってしまいましたが、正月にふさわしい話題ではないかと思い、紹介させていただきました。
 2014年には、新たな課題が次々に押し寄せてくるだろうと思います。自由な発想で新たな課題に挑戦する年として2014年を位置づけることができたらいいなという希望を申し上げて、新年のご挨拶とさせていただきます。