グラフで見る社会

『グラフで見る社会』というガリ本が出版されました。10年前に亡くなった長岡清という高校の先生が『たのしい授業』という雑誌に発表したグラフの選集です。実は、長岡さんが亡くなったとき、書きためた原稿やグラフが段ボール箱5つ分あったそうです。それを預かって、デザイナーでアマチュア研究者の竹田かずきさんが選定して作った本で、さすがデザイナー、美しい本です。板倉聖宣さん曰く「この本を半分読めば、教師としての力量は格段に上がる。この本を板倉聖宣推薦本に指定したい。この本は250部作ったそうだが、つくる部数が少なすぎる。もっと売れるはず。」
 この話を上田仮説サークルでしたら、その場で10部の注文が。
 「どうすれば入手できるか」ですか?仮説社や竹田かずきさんに連絡すれば、入手できるはずです。竹田かずきさんの連絡先がわからない?私もわかりません。しかし、本当に入手したいという人は、何としてでも連絡をつけて入手してしまうものではないでしょうか。
中でもよかったのは、最初に載せてある「社会の見方とグラフの描き方」と「インスタント麺の生産の変遷」でした。「社会の見方とグラフの描き方」ではサッカーの強さと、民主化、自由がどの程度あるかの関係を論じているところがおもしろかったです。サッカーは試合が始まってしまえば、監督がいちいち指示できない。そこで、選手が自分の判断でプレーできることが大切で、自由のない国ではサッカーが弱いということです。自由化でサッカーが強くなり、ソ連の弾圧などで自由が亡くなったらサッカーが弱くなったという例が、ハンガリーチェコポーランドと挙げられていました。この国はかつてソ連支配下、影響下にいましたが、どこでも自由を求めて反乱が起きた国です。ソ連支配下の国はほとんどがギリシャ正教の国ですが、この3国(ハンガリーチェコポーランド)はカトリックの国です。ギリシャ正教はいわば、「イスラム化したキリスト教」で専制支配になじみやすい考え方だが、カトリックはいわば「ゲルマン化したキリスト教」で民主的になりやすい、そこでソ連ではスターリンという専制支配者が出たが、ドイツではヒットラーという独裁者が出た。ヒットラー専制支配者ではなく、独裁的指導者であるという違いがある。この話は牧衷さんの本に出ています。長岡さんの研究は牧衷さんの話をさらに進めるものになっています。
 インスタント麺というと、「健康に良くない」と反射的に言う人がいますが、インスタント麺というのはどのくらい画期的な発明だったかがこの本を見るとよくわかります。インスタント麺の発明の社会的意義のプラス面とマイナス面では圧倒的にプラス面の方が大きい。だから、指数関数的に普及したのでしょう。その評価をしないでマイナス面ばかり指摘している運動が成果を挙げないのも当然という気がします。
よかったら読んでみてください。1500円です。竹田かずきさんのメールアドレスはkazuki@star.email.ne.jp
これは本の奥付に印刷されていることだから、公表していいと思います