板倉聖宣さんの認識論は「科学的認識は仮説実験的に成立する」と要約できると思います。今となっては私にとって仮説実験的認識論以外にどのような認識論がありうるのだろうかと、思ったりしてしまうのですが、よく考えてみると、世の中のほとんどの認識論は仮説実験の論理となっていないことに改めて気がつきます。まだまだ、私たちのする仕事はたくさんあるということなのでしょう。
バナールという物理学者がいます。1901年
アイルランド生まれの物理学者だが、本人は
科学史家のつもり。イギリス
共産党中央委員で
ソ連共産党と交友がありました。バナールは『歴史における科学』という本で
スターリンを礼賛しました。その本の翻訳が日本で出版された直後に
ソ連で
スターリン批判が始まりました。バナールの主張は「
マルクス主義だから正しい」という考えです。これは仮説実験の論理ではありません。板倉さんはこのバナールの主張を克服したように思います。しかし、そこから受けた影響も大きいようです。板倉さんがバナールの考えからどう影響を受け、どう脱却したかについて知りたいと思います。