信大理学部CST授業1回目の報告

はじめに
 信州大学理学部教職相談室から講義の依頼がありました。11月14日、12月5日、12月12日の3回にわたって、1回につき90分の講義を4コマやるというものです。
 講義の内容はいろいろ考えて、次のようにすることにしました。
1回目 「仮説実験授業入門」
 《見れども見えず》と《自由電子が見えたなら》で授業をしながら仮説実験授業の基本的な考え方を説明する。
2回目 「仮説実験授業と科学史
 《力と運動》で授業しながら、科学史上で問題にされたことが授業書の中にどのように扱われているかを論じる。
3回目 「仮説実験授業の研究論」
 《不思議な石 石灰石》を授業しながら仮説実験授業の研究がどのような行われているかを説明する。

[授業する前に立てた予想]
△理学部の学生の予想分布は高校生とだいたい同じになるだろう。
△理学部の学生も仮説実験授業を歓迎するだろう。
11月14日(土)9時~午後4時10分 90分授業4コマ
 1コマ目では、授業プラン《見れども見えず》で、問題意識の重要性の話をしました。

《見れども見えず》の授業評価
・たのしかったですか。
・わかりましたか。
・ためになりましたか。
の3項目について全員5か4の評価をつけてくれました。

《見れども見えず》の授業の感想

◆楽しく、また頭に入ってきた
 どうしても詰め込みがちになりそうな高校の授業野中で、過去に聞いた授業の高度なやり方は、実際にはとうてい行なうのは無理に感じられるものが多く、今回もそのようなものではないかと思っていいたが、手軽に行なえ、問題意識の大事さもわかり、応用して問題を自ら作りたくなるほど楽しく、また頭に入ってきた。いつかぜひやってみたい。生徒をほめ自信を持たせるきっかけとなるのもすばらしいと思う。
◆意識して見る
 普段よく目にしているものでも意識して見ることをしないとその本質が見えてこないと感じた。
◆見えていないことを実感
 普段見ているものも意識していないと、実は見えていないことを実感しました。また、見えていないものをただのあてずっぽうではなく、多面的に考察し、予想することも”考える”訓練としても有意義であると思います。
◆経験を重ねても
 日常的に目に映っていることも意識して見ようとしないと、認識できないことに気付き、「経験を重ねても科学的な考えは身につかない」という真理がわかった気がした。
◆人間ってすごい
 授業者や学習者が違うと様子も違っておもしろかったです。「わかりましたか」の評価が「4」なのは、おまけの話題のアースのところがもう少しわかりたいし、頭の中でよく理解できていないからです。予想を持つ大切と同時に今回は”人間ってすごい!!”のところ、なるほどーと改めて思いました。(自分ってすごい)

[実験の結果] 《見れども見えず》の授業は成功でした。

 次に、2・3・4コマ目に《自由電子が見えたなら》をやりながら仮説実験授業の教材論を話しました。仮説実験授業の基礎理論、認識論の話をするより、仮説実験授業を体験してもらう方がわかりやすくなると思い、ほとんど授業書どおりに授業をしました。銅、鉄、アルミニウムの熱伝導度を手で触って実感する実験が楽しかったです。
 4コマ目には鉛のおもりをくっつける実験もそれぞれにやってもらい、全員鉛がくっつくことを喜んでいました。また、「授業では何を教えるかと同時に何を教えないか」が大切という話をし、半導体(黄鉄鉱、ケイ素)が金属光沢に見えるが金属ではないこと、黄鉄鉱の単結晶が豆電球がつくくらい電気を通すことをやってみせました。その上で、「こういうことは理科の先生は知っていたほうがいいけれども、この授業ではそういうことに触れないというのが肝心」という話をしました。

自由電子が見えたなら》の授業の評価

・たのしかったですか。
・わかりましたか。
・ためになりましたか。
の3項目について全員5か4の評価をつけてくれました。

自由電子が見えたなら》の授業の感想
◆ぜひ取り入れたい 
 実際これだけのことをやるのは大変だと思ったが、とにかく内容が濃く、それでいてどれも頭に入るのはすごい。経験から学ぶやり方で一つ一つ考える時間もあり、最大限つめこめていると感じた。それでいて、あえて教えない事やほめ方や質問の仕方など、すべてが練られていると感じられた。教員になることができたらぜひ取り入れたいです。
◆実感できた 
 金属の様々な性質が自由電子の存在によって生じていることが実感できた。
◆実物は新鮮 
 やはり、理論で見ただけ(教科書を読むだけ)とは、インパクトが格段違います。実際は同じもの(現象)を見るにしても写真だけでは感動しませんが、やはり実物は新鮮で感動しました。

第1回目の講義は成功でした。