信大で講義2回目の報告

12月5日(土)に信大理学部で基礎実験講座として「仮説実験授業と科学史」というタイトルで講義・授業をしました。参加者は前回より微増。
 1コマ目は科学史の研究の成果が仮説実験授業を生み出したという話をしました。
「地球が動いていることを小学生にもよくわかるようにどう説明したらいいか」と問いかけると説明に窮している学生さんが多かったです。
 天動説のプトレマイオスという古代の天文学者は著書で
「地動説の方がはるかに理論が簡単になる」
しかし、地動説には難点がある。
天動説のプトレマイオスの著書
「地動説の方がはるかに理論が簡単になる。しかし、地動説には難点がある。」
1 地球が1日に1回転しているとすれば、地球自体がとっくの昔にバラバラに飛び散ってしまっているはずだ。
2 地球の生物や物体は地面にとどまることができず、振り落とされてしまっているはず。
3 高い塔からものを落とせば、落ちるまでの間に地球が動いていって、ものは取り残され、真下に落ちないはず。
4 雲その他空に浮かんでいるものはすべて西に動くであろう。
→事実はそれに反する。
故に地球は動いていない。
みなさんはこれにどう反駁しますか。当時は慣性の法則は発見されていませんで
した。
→事実はそれに反する。
故に地球は動いていない。
と言っています。
みなさんはこれにどう反駁しますか。当時は慣性の法則は発見されていませんでした。
このように問いかけました。これには学生さんたちも反駁しようがなく困ってしまいました。するとKさんが
「地球が壊れることを心配するくらいなら宇宙が壊れることを心配しなくていいのか」と発言し、みな「なるほど」という表情。
 実は、コペルニクスの著書『天体の回転について』にはKさんと同じ反駁が書かれています。こういうことは仮説実験授業の中でよくあることです。「Kさんの考えはコペルニクスと同じだよ。すごいねー。」とほめることが大切と理科教育法の講義。それにしてもKさんはすごい。仮説実験授業の中では歴史上の大天才と同じことを主張する生徒がしばしば現れます。
 《力と運動》の授業書の中の問題が科学史上の問題と同じということを指摘するつもりでしたが、大幅な時間不足のため最後は駆け足に。
運動学の指導の最重点は速さの概念だと説明しました。「最重点は(加速度でなく)速さだ。速さの概念が出来ていなかった生徒に加速度の説明をして、加速度を説明するのは難しいと嘆いていたのだ。」というのが私の主張です。
動力学の指導の最重点は慣性の法則
これまでの慣性の法則の教え方を3つにまとめました。
①慣性という性質で教える。
②運動エネルギーが一定だから慣性の法則が成り立つと教える。
ガリレイの相対性原理から教える。
 仮説実験授業では途中まで①でだいたいの説明をして、最後に③の相対性原理から説明しています。この説明はガリレオ・ガリレイの『天文対話』の2日目に出てくる議論です。生徒が本当に納得するのは相対性原理からの説明です。しかし、時間不足でその詳しい説明に踏み込めませんでした。
 やはり90分4コマはハードでした。次回12月12日がすぐ迫っています。その準備に忙殺されそうです。また、多くの人たちの助けをお借りしたいと思います。それにしても4コマの講義に出てくる学生さんに敬意を表したいと思います。