関良基氏の本『中国の森林再生』の書評1

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牧衷氏による書評が送られて来ました。入力したところまで掲載します。
昨日6月12日に関さんの高校時代の担任の先生(Y先生)に会う機会がありました。関さんの本のことを話すととても喜んでくれました。
以下牧衷さんの書評の一部
書評:日本の森林再生を志す人たちにぜひ呼んでもらいたい本
『中国の森林再生──社会主義と市場主義を超えて──』
関良基・向虎・吉川成美著 御茶の水書房 2009年2月発行 2310円

 本書は現在中国で進行中の植林再生プロジェクトの現場報告である。日本では黄砂の飛来問題などと関連して、中国における自然環境破壊のひどさがことさらに報道されることが多く、中国で大規模な森林事業が国家プロジェクトとして進行していることを知る人の数はそう多くはないだろう。
 本書によればこのプロジェクトによって2000年から2005年までの6年間で、中国の森林面積は2400万ヘクタール増えたという。2400万ヘクタールといえば24万平方キロメートル、日本の国土の全面積38万平方キロメートルの6割以上に当たる広大な面積である。思わず「ホントかよ」と目をこすりたくなる数字だが、これはFAOの統計による値と知れば、あらためてこの計画の巨大さにびっくりする。
 この巨大プロジェクトは「退耕還林」と呼ばれる。退耕還林とは読んで字の如く耕地をつぶして林地に転換すること。退耕される耕地は1950年代末から60年代初頭にかけて毛沢東主導のもとに行われた「大躍進」政策の結果生まれた急傾斜の山間耕地である。
 大躍進政策は、革命後一旦農民各戸に分配された農地や林地を強制的に集団化して人民公社をつくる農業集団化政策だったが、その一環として「自力更生」のスローガンの下、農村工業の建設が唱えられ、土法高炉と呼ばれる製鉄が全国の農村で行われた。
 土法高炉というのは、原理的には日本近世のタタラ製鉄と同じ製鉄法で、ごく簡単にいえば鉄鉱石と木炭を共に強熱して鉄を得る方法である。(現在の製鉄は石炭を蒸し焼きにしてつくるコークスを用いる。)
 タタラ製鉄は俗に「一カマ一山」と言われ、タタラの炉を一つつくれば、山一つがハゲ山になる、といわれるほどの大量の木炭(すなわち木材)を必要とするメチャクチャな資源浪費型製鉄法である。しかも、現代の社会が必要とするような質の鉄がとれる可能性はゼロに近い。当時の中国共産党中央にこの程度の技術知識もなかったなどとは到底考えられないことだが、現実にこの土法高炉運動は行われ、結果として鉄はできず、山は切り払われ、後に急傾斜の粗悪な耕地だけが残った。
以上書評の最初の部分です。今日、牧衷さんの研究会が軽井沢であり、参加します。書評の続きはその後でアップします。