物理学史研究1

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 板倉聖宣さんが創刊した物理学史研究1の目次です。この号で板倉聖宣さんは「論文"古典力学電磁気学の成立過程とその比較"のための序文──この研究の意図と論文の構成について」という自分の論文の意図を論ずる論文を書いています。自分の論文が正しく意義のあるものであることを主張する論文です。科学史上の独創的な科学者はしばしば自分の論文が正しいのであるということを主張する論文を書いています。(マイヤーなど)板倉聖宣さんもそう主張する必要のある論文だったのでしょう。当時としては独創的すぎて、無視されるか反撃されるかの可能性の大きい論文でした。事実、板倉聖宣さんに対しては多くの反論が寄せられました。(現在の科学史学会の大多数は反板倉聖宣と言っていいような状況のように思われます。)
 また、板倉聖宣さんは「アリストテレス力学の成り立ち」という論文とアリストテレス、パッポス、ヘロンなどの科学史原典を翻訳し掲載しています。精力的な仕事ぶりに驚かされます。
 板倉聖宣さんの論敵の広重徹さんも「アインシュタインはもう古いか」という文を書いています。
編集後記は板倉聖宣さんが書いています。「この雑誌を出すに当たって採算不可能ではないだろう2~3万円の資金は集まるだろうと予想を立て、その予想の確かなことを半ば一人で請け負ってきましたが、・・・」と書いています。板倉聖宣さんは『物理学史研究』という雑誌を創刊しようとして、その資金を集めることが出来るかどうかということを考えるときに意識的に予想を立てています。予想を立てなければ結果が怖くて足を一歩前に出すことが出来なくなるか、蛮勇を奮って前に出たものの資金が集まらなかったり、作った雑誌がまったく売れなかったりして大失敗してしまったかも知れません。しかし、意識的に予想を立てることで、当たる可能性をよく勘案して見通しを立てることができたに違いありません。この頃既に、こんな企画にも予想論を意識的に適用しているということに驚かされます。こんなことを知ると何かうれしい気がします。
さて、その実験結果はどうだったでしょうか。板倉聖宣さんの予想は当たったでしょうか。あなたも予想を立ててみてください。
予想
 ア 資金は集まった。
 イ 資金は集まらなかった。

実験の結果は編集後記に書いてあります。
編集後記を読むと「予想以上にこの雑誌の発行が支持されている。カンパ総額は19500円でした。」と書かれています。資金は板倉聖宣さんの予想(2~3万円)どおり集まったのです。
 また、板倉聖宣さんはこの雑誌へのカンパを4000円出しています。これはカンパした人の最高額です。カンパを集めるといっても、その2割を板倉聖宣さんが出していたのです。資金的にも中心人物だったのです。
 板倉聖宣さんは編集後記でカンパに感謝するとともに継続発行のためあと1万円くらいは必要として、カンパを呼びかけています。
 また、別のところに「菅井準一、田村松平、坂田昌一の寄稿も予定されていたが、間に合わなかった」と書かれています。当時のリーダー的科学者、科学史家です。これらの大家の寄稿した文は第2号以後に掲載されているのでしょうか。今日は疲れたのでここまで。次回までに調べて報告します。