次の出版

牧さんの本第10集に掲載予定の講演の一部です。
民主主義があれば憲法は不要か
 ぼくがしゃべってなくてかなり重要な問題は民主主義と憲法の関係の問題です。民主主義の政府は民衆の多数の同意のもとに成り立っているのだから、そうしたら民衆の同意で成り立っているのだから何をやったって民主主義の建前からはいいはずです。しかし、民主主義で多数を取ったら何をやってもいいわけではない。そこに憲法があっていろいろな制限がそこに加わる。そういう制限が加わるのはなぜか。
「民主主義でやれば憲法はいらないじゃないか。」という考えがある。その考えを極端に進めたのが、自由、民主、独裁です。「民主主義は多数を取っているんだから独裁的にやるんだ。憲法もへったくれもあるか。」という考え方をしたとしても、民主主義自体の考え方から言ったら差し支えがないはずです。
 それなのに、なんで憲法があるのか。そういうことはみんなあまり考えないですね。
憲法の機能 民主主義の暴走を防ぐ
 憲法ができあがってきた歴史を見ると、王様対議会の対立ということで出てくる。だから憲法の機能は政府の権力を抑制することだということばかりに目が行ってしまう。教科書にもそう書いてある。
 ほんとかというのが僕の問題提起なんです。確かに18世紀19世紀ならそうだった。しかし、21世紀までそんなこと考えていていいのか。そうじゃないだろう。もう民主主義になっちゃっているんだから。政府が勝手なことをするっていうのは、それを選んだ民衆の方に責任があるんです。日本国憲法には「少数の権力者が云々」と出てきますけれども、あれは反省が足りないです。少数の権力者が日本を戦争に引きずり込んだんじゃあないんです。国民が戦争に引きずり込んだんです。国民が戦争に賛成しなかったら戦争なんて始められないんですよ。どんな独裁国家だってそうです。そうすると、今ある憲法というのは、民衆が権利を主張して政府を制約するというという種類のものとはちょっと違う。