科学史研究と科学教育

板倉さんの本を出版します。
一部を紹介します。
デカルトもそうです。このことから、速さというのは距離と時間を計算しないと出て来ないんだと思ったりしますが、デカルトやこの時代の科学者たちは速度というものについて、こういう計算をする前に構築する。そして「速さ=距離÷時間」なのか、「速さ=時間÷距離」なのかがわからなくなって変なことをする。たとえば、落下の図を描いて、落下時間をとらないで、落下距離をとるんです。その方が自然なんです。時間が経ち、落下距離が2倍になるとき、図形の面積で求めた落下距離は4倍になってしまう。こんなおかしなことになる。何が何だかわからないことになるので、距離で速さを考えるのは間違いで、速さは時間で考えなければならないというような証明のしかたをするんです。ガリレオはそういうことを『新科学対話』に書いてしまう。ガリレオはそれだけのことで速さ=距離÷時間に到達したのではなく、偶然の発見とは言えませんが、そういうことを『新科学対話』に書いています*3。
 今の学校教育で「速度=距離÷時間」と教えていますが、数学がわかればそれができるという単純なものではないことがわかります。子どもたちにはディメンジョンの問題なんかを相当丁寧に教えなければいけないんです。わかってしまった人間には何でもないようなことだけれども、わからない人間にとってはここを理解するのは大変困難なんです。とすれば、この辺の教育に多大な注意をしなければいけないということになると思います。