憲法と民主主義

牧衷さんの講演の一部を紹介します。第10号に掲載予定
国民が好戦的にならなければ戦争は起こせない
 ドイツは日本と同様、いろいろ言われた。やっぱりナチスと日本の場合と、こう言うと差し障りがあるかも知れないけれども、アメリカ占領軍には明らかな人種的偏見がありまして、「日本には民主主義を与えればいいや。ドイツのような先進国じゃないんだから。」というような考えがあったとしか思えないようなことがたくさんあります。アメリカ占領軍には、日本の軍国主義について、日本の民衆がそれを支持したから軍国主義になったという背景についての深い洞察があまりないんです。「国民は軍部にだまされた。」というより、「日本は後進国で圧倒的に官僚主導、お上主導の国だ。だからお上が戦争をやったんだ」と考えている。アメリカ占領軍は「国民が戦争をやったんだ。」とはあまり考えていない。日本人は日本人でこの戦争を自分でやったとは思いたくない。それは日本文化の内から秘めるところの無責任体制。自分のところに責任が帰ってくるなんて考えつかないんですよ。だから被害の話ばかり出る。それで国民自身は「だまされた」というけれど、だまされたんじゃないんですよ。国民自身が好戦的にならなければ、戦争なんか出来ないんですよ。近代戦なんかできるわけない。日本政府といえどもそうだったんですよ。
 軍隊を持ったからすぐ戦争が始まるかというとそんなことはない。すぐ戦争が始まるみたいに騒ぎ立てるのはよくないけれども、憲法の問題を憲法の条項の問題だけとして捉えないで、憲法が日本国民に命じていることはどういうことなのか。