戦略を間違えると必ず負ける3

牧衷さんの講演の一部を紹介します。

 軍隊というのはどのくらいそういうことにこだわるかということを身をもって知らないんです。関東軍がどのくらい政府の言うことを聞かなかったか。軍隊というのは日本国の中の独立王国なんです。今自衛隊が日本の中の独立王国なんて感じる人は一人もいないでしょ。実際今の日本では自衛隊が独立王国であるなんてことはないんです。かつて小沢一郎が日本を普通の国にと言って自衛隊を軍隊として公認しろと言ったときに、後藤田正治が「おまえは若いから知らないだろうが、サーベルがいばりくさったらどうなるかわかっているのか」と言って怒鳴ったんです。後藤田正治は知っているんです。あの年代だから。知っている年代はいたんです。野中広務は知っていたんです。知っている人が自民党の中でそれを危惧していたんです。
 野中広務官房長官のときに君が代日の丸の法制化になりましたけれども、すぐに野中広務は「これは強制するものではない。」と官房長官談話を発表しているんです。彼はすごく敏感なんです。日教組はだめなんです。その時「野中さんいいこと言ってくれた。「強制するものではない」ということを官房長官の命令で文部大臣に通達させろ」と。「そうすれば私たちは明日から日の丸君が代反対闘争をやめる」と日教組の委員長が野中広務のところに言いに行けばよかったんだよ。そうすれば日教組は無用の日の丸君が代反対闘争をする必要がなくなるし、いやだという教員が立たなかったからクビになるという事態にもならなかった。戦略間違えるとそういうバカなことになる。

相手は一色ではない

 やっぱり闘争になりますと何でも反対する側は一色だと思うでしょ。ところが相手は一色じゃないんです。基地問題について言えばまず正面に立っているのはアメリカの国防省です。ところがアメリカの中でも国防省国務省は必ずしも立場が同じじゃあありません。今度面白かったのは最初に国防省が出て来るんです。ゲイツ国防長官ですね。こいつはものすごく高圧的です。軍人だからね。約束は守れ。いますぐやれ。とこう来た。冗談じゃねえという話になる。この野郎という話になってクリントンと話を始めた。もう空気が変わりますね。5月まで待つって言っている。これは国務省の方はもっと大きい方から見ます。軍事的観点だけから言ったらゲイツの言うとおりです。だけど軍事的観点だけから国の政策は決められないし、それにアメリカはありがたいことにまだまだ国務省優先です。戦前のにほんならクリントンよりゲイツの方が偉いけれども、今のアメリカでクリントンゲイツを比べたら、クリントンが「あんた黙りなさい」って言ったらゲイツは黙るんですから。

基地問題国務省と交渉する

 ですから、少なくとも鳩山内閣は今までの内閣と比べてどこが変わったかというと、基地問題を扱うのに国務省と交渉するという道を開いたということが変わりました。これは今後の日本の基地問題を考える上でかなり大きな進歩です。落としどころは日米地位協定の改訂ですよ。沖縄から基地を外に移すということはまず不可能です。キャンプシュワブにするか辺野古にするか、亀井がキャンプシュワブなんて言い出したのはアドバルーン上げているんで、日本の防衛省の外交担当者の中にそういう意見を持っている人間が主流だ、外交担当者の中では主流の考え方だということだと思います。決着するのはそういうことで決着すると思います。だけども、そこに日米地位協定の改定がなくてそうなったら完全に日本の負けです。基地問題ではアメリカにかなわないということになる。こんなばかなことになってはいけないです。それがわかっていないから、安保闘争でやったことがわかなない。

運動経験をして運動感覚を養う

 予防線を張るのもバカだね。アメリカがせっかく5月まで待とうと言ってくれているんでしょ。その心遣いには感謝してアメリカもそこまで待ってくれると言っている。われわれも一生懸命探します。現地の人が全員反対というところでは基地は成立しないんだから、私たちも真剣ですと言っていればいいんですよ。現時点では。だから、何て言うんでしょうか。運動感覚ゼロだね。若いからね。若いときに政治的経験積んでおけって言うんだね。大学生の間に暴れ回っておけと言うんです。そういうことで覚えるんですから。

米軍基地が沖縄から引き上げる可能性は低い

 だから、結論としてキャンプシュワブになるか辺野古になるか他のところになるかわかりませんが、基地が沖縄から引き上げるとか、全部グアムに移転するとかいうことはまずないと。条約改正しなかったらどうにもならないですよ。ぼくはここに来る前に4日くらい沖縄に行って沖縄のおばちゃんたちと話したんです。沖縄に行ったのは僕の友人の詩人がこれまで書いた詩の中から牧が勝手に詩を選んで詩集を編んでくれと言う話があって、じゃあやろうと言ってその相談に行ったんですが、沖縄にも詩だの何だのが好きなおばちゃんたちがいて、そのおばちゃんたちに話をするはめになっちゃったんです。そうしたらあれはこういうことだよって話をしたらおばちゃんたちは「そうよ、あの日米地位協定があるからいけないのよ」それは僕は正直言うと痛切にわかるんです。戦後その状態を実際に経験しているから。その状態がれが今も沖縄にあるんですよ。それを変えなければいけない。それを変えることができれば沖縄の人たちは沖縄に基地があったって納得するんです。現に沖縄に基地がなくなったら仕事がなくなって困る人がたくさんいるんです。