政権交代で日本経済は変わったのか(続)

牧衷さんの講演の続きを紹介します。

 所得税制を変えるだけではだめです。社会全体を支えるためには消費税でなければだめです。消費税は金持ちにも貧乏人にも平等にかかる。だから貧乏人にきつく響くんだと言うんだけど、消費税を貧乏人に対する還付に使うならいいわけですよ。取られることだけ考えているからいけないんですね。もらうんだから。「消費税を払うことは確実に払うけれども自分が確実にもらえるかどうかわからないから反対だ」という人もいる。それには、「あんたの気持ちとしてはよくわかるけれども、それで国の経済がなりたつわけじゃない」と言うよりしょうがないですね。
 ジャーナリズムの議論がちゃんとしたジャーナリズムの議論でなくてまったくの床屋政談になっている。国会議員の給料下げろなんてね。国会議員がちゃんと仕事してくれたら今の3倍払ったっていいんです。
公務員の給料は国家予算を縮小せざるを得ないから下げざるを得ない。だけどそれは解決策ではない。消費税を上げていかなければやっていけないことは理の当然なんです。北欧の消費税は高いです。消費税の高いのには日本から旅行に行った人は驚くんです。そのお金がどこに使われるか。それが社会全体の貧富の格差で生活困難な人や高齢で働けない人の保障に使われるんであれば問題ない。というよりこれは社会の義務です。これを社会の義務と考えるかどうかが問題です。税金がない世界はめちゃくちゃなことになる。貧乏人は際限なく貧乏になるし、金持ちはどんどん金持ちになる。一時期の中国はそうでした。万元戸が数年の内にできる。貧乏なものは生活保護がないから死ぬしかない。あれだけの人口ではなかなか生活保護ができるようにならないですよ。12億の大部分は貧乏ですから。

格差が固定されることが問題

 格差があって何が悪い。格差が固定化されるのが悪い。格差も程度の問題ですよ。日本の格差も相当悪くなっている。かつての日本、戦後高度成長が始まる時期には企業を例に取れば昔の日本はトップと新入社員の月給の差は8倍から10倍でした。社長の月給が10万円の時に新入社員が1万円でした。だから極端に平等な社会だった。今の格差はすごいですよ。
 年金の受給額は人によってそんなに変わらないですよ。国民年金は大変ですが、厚生年金受給者は、一般と大学教授は400万と600万くらいです。
年金で安楽に暮らせるというふうに考えると莫大なお金が要ります。金利だけで食おうということですからね。100億くらいなければ安心じゃないですよ。老人になると支出も減るんです。家のローンは払い終わって資産になっている。困ったら売ればいいという話になる。お金がありあまることはないけど、普通に暮らしていけるということでみんなが落ち着いてくれれば社会は安定する。
 子どものときから教えておいてほしいことは、生まれてから死ぬまでにいろいろなことがある。老人になれば働けない。子どもは働けない。障害者は働けない。そういう人たちがきちんと安心して生活できるようにすることは社会の義務だ。国の義務じゃない。社会の義務だ。つまりわれわれの義務である。そうふうに教えないからいけないんです。それを支払うのは君たちの義務だとなんで教えないのかね。そのためにはいろいろな仕掛けが必要で、その仕掛けを運営するのが国家という機構なんであって、国家がやっているんではない。国家が雇われてやっているんだよ。伝統的な保守の人たちはそこをはっきりさせることが怖いんです。