金融政策で経済の統御が出来るか

牧衷さんの談話の一部を紹介します。
 金融政策で経済の全部が統御できると思っている。そんなことないんですよ。金融政策で出来ると思っているから,財政の均衡というのは非常に重要になる。財政の均衡を第一に考える。
 だけど,ある時には財政の均衡を考えてはいけないことがあるんですね。今たとえば日本で財政の均衡ということを言ったらデフレを加速するだけです。財政改革というのはどういうときに出来るかというと,景気がよくて税収が上がるときに初めて出来る。景気が悪くなって税収が減っているときに赤字を埋めると言って,できっこない。宮沢喜一が「財政均衡というのは景気のいいときにやるものですよ。」アメリカの財政改革だって税収が上がったから自然に赤字が消えたんです。日本だってそうなんです。税収が上がらない限り赤字がなくなるわけない。そういうことがわかんないんだよ。ほんとにどうしようもないね。
 アメリカのシカゴ学派の経済学者は全然わかってないです。シカゴ学派というのはアメリカの経済学者の中の一派ですが,レーガンの時代にレーガノミックスアメリカの天下を取りまして,それ以来アメリカの経済学というのはそれ一辺倒でやるわけです。
 竹中平蔵の言うことを聞いていると,教科書と現実が狂ったときに現実の方が悪いんだという調子でしょ。現実と教科書が狂ったら間違っているのは教科書の方に決まっているんですよ。気づいても言えないでしょ。
 アメリカの言うこと聞いて財政問題でロシアも大失敗。インドネシアも大失敗した。さすがにIMFは気がつきましたね。アメリカ型を押しつけていればいいというのは考え直しましょうと言うけれども,日本とドイツの知恵借りましょうとはなかなか言いませんね。
 日本とドイツの戦後の復興がどういうふうにして出来たかを知らない。わかっている連中はいたんですが,それが少なくなってきましたね。今でもよくわかっている連中は,自民党の年寄りの連中です。「日本が戦後なぜ急速に復興したのか。それは日本が社会主義的になったからだ」と公然と言いますよ。なぜ自民党が成功したか,自民党の長老は,「自民党が成功したのは社会党の政策を全部3年遅れで実行したからです。」と言っていますよ。
上田仮説出版『牧衷連続講座記録集Ⅷ人間関係論と仮説実験授業』より抜粋