動物行動学と経済学

牧衷さんが1993年に菅平でやった講演の一部を紹介します。

以下講演

動物行動学と経済学

 1960年代の終わり頃からアメリカで数理経済学がさかんになった。日本に1970年代に「近代経済学」という名前で入ってきた。その「近代経済学」の教科書には物理の教科書のように、練習問題があって、学習していくと問題が解けるようになっていた。それを見て日本のマルクス経済学者は頭を抱えてしまった。というのは、マルクス経済学の教科書には練習問題のついた教科書がなかったからである。
経済学の理論をもとにして、それに当てはめて動物の行動を研究したらどういうことになるだろうか。たとえば、鮎がなわばりを作る。なわばりを作らない鮎もいる。鮎がなわばりを作るか、作らないかは遺伝子によって決まるのだろうか。調べてみると、鮎は状況によってなわばりを作ったり作らなかったりする。川那部浩哉という学者が鮎の研究をした。川那部浩哉著『川と湖の魚たち』という本がある。なわばりというのは自分のテリトリーを持ってその餌を独占する。しかし、なわばりへの侵入者を撃退する回数が多いと餌をついばむ時間が減るので、なわばりを持つメリットは小さくなる。自分が生きていくのに必要な餌が取れる限界以下になるとなわばりを捨てて、群になってしまう。動物の行動は経済的な理由がある。この研究をエコロジーという。エコロジーのエコはエコノミックスのエコなんです。