牧衷連続講座記録集Ⅶの目次

牧衷連続講座記録集Ⅶの目次を紹介します。この本は「学生運動と仮説実験授業の源流」という副題がついています。大変充実した内容の本です。ブログで順次牧衷さんの本を紹介していきます。続刊予定も掲載していこうと思います。

1「公」という概念について
  第1部 ヨーロッパ中世史におけるcommonとpublic  牧衷   1
public(お上)がindividual(個人)に対して優越できる根拠はcommon(みんな)を代表しているからである。「公」をpublicではなくcommonとして捉えることで,よりよい社会の実現が可能になる。
  第2部 commonとpublicから教育基本法改定を考える  牧衷 22
教育基本法国家主義的改定に「個人の自由に反するから反対」と言っても公共心の欠如の実情を憂う人々に対して説得力がない。公益が大切だと考えている人を味方につけるような方針を立てるべきだ。commonの立場に立つと,教育内容が大幅に変わる。
 番外 commonとpublic こぼれ話 牧衷 36
靖国神社問題をcommonとpublicで考える。砂川闘争はcommonの立場に立ったから勝てた。仮説実験授業の授業運営法はcommonの原則で出来ている。

2 仮説実験授業の源流
        ── 学生運動・自然弁証法研究会
板倉式組織論・発想法 板倉聖宣 43
大自然弁証法研究会の組織論と仮説実験授業研究会の組織論の共通点。真理は実験で決まるか頭の良さで決まるか。戦時中の理科教育から「真理は実験で決まる」ということを身につけた。
 板倉思想の成立と発展 ── 仮説実験授業成立前史    板倉聖宣 53
弁証法と党派性の議論が結びつくと粛正が始まることに気づき,「左派=マルクス主義」を疑う。自然弁証法研究会での活動を回顧し,仮説実験授業の成立前史を語る。
仮説実験授業提唱の頃 板倉聖宣  70
上廻昭氏との出会い,《ふりこと振動》の成功と研究会の組織,仮説実験授業を文部省からも左翼運動からも切り,科学教育を通じて日本人のものの見方考え方をきちんとつくるための教育を目指す。
  学生運動と仮説実験授業            榊原郁子 90
ロシア革命以後の日本の歴史を概観し,戦後の学生運動史を振り返り自身の学生運動の体験も織り交ぜながら,学生運動と自然弁証法研究会と仮説実験授業の関係,仮説実験授業の基本的考え方の成立の謎を探る。1960年に北大で経験したた学生運動には,いかなる権威にもとらわれない,自由で活動的な議論や雰囲気が充ち溢れていた。その時の運動の担い手は〈ブント〉という学生共産主義者の組織で,その中心には,佐伯秀光氏(筆名山口一理)をはじめ,自然弁証法研究会の有力メンバーがいた。この時の運動の空気は仮説実験授業のそれに非常に近いものを感じる。この空気は佐伯氏たち自然弁証法研究会の人たちが持ち込んだもので,つまりは板倉さんに由来するのではないか。
  戦後日本学生運動と仮説実験授業 ── 榊原報告をめぐって
   中原しげる・牧衷 116
学生運動について知らない人のための解説をしつつ,榊原報告についてコメント。仮説実験授業の基本的な考え方は1950年の全員加盟型学生運動に由来するのであって自然弁証法研究会に由来するのではない。仮説実験授業の考え方とブントの考え方は別物である。
戦後日本学生運動と仮説実験授業こぼれ話 牧衷 152
政治論文を哲学論文と思い違い,権威づけの引用と訓詁学,たのしい授業とたのしい運動の秘訣,党議拘束禁止と国会議員のリコール制,仮説実験授業をやればみんな賢くなるか,洪水対策としての間伐

3 運動論応用編
高野秀夫と共に見た夢       牧衷著 163
1956年から57年の夏頃まで,学生運動ルネッサンスでの方針転換,砂川闘争での勝利,日本最初の「構造改良」的学生運動の構想と挫折。インターネット上に掲載されたものの誤植を訂正した正文を収録。
  上手な負け方                  牧衷 181
負け戦の撤退の秘訣はとにかく逃げることである。逃げれば責任なし。負け戦かどうかの判断の仕方。苦情を言ってくる親への対処法