牧衷さん講演会

ブログを初めて開設しました。まだ要領がよくわかりません。順次学習して、改良していこうと思っています。まず、数年前の牧衷さん(元岩波映画シナリオライター)の講演から一部を紹介します。講演全体は順次テープ起こしを進めています。
支配と統合こぼれ話
講師 牧衷
 日時 日時 2004年6月26日(土)午後1時~2時30分
会場 軽井沢高原ホテル
牧衷 それと同時に社会を動かしていく基本法則がありますから、その基本法則をきちんと教えていかなければいけないと思いますけれども、その基本法則のひとつが支配と統合なんです。
林 その支配と統合でうまくいっていない。上からの締め付けは強くなっているんですよ。うまくいかない先生はこういう話してもなかなかうまくいくようにならない。そういうところで上から締め付けがきつくなってきている。支配と統合で生徒がおれたちで、先生が上で締め付けている人たちでしょ。ところが上の方は今牧さんが言ったようなことはわかっていない。それをわからせるには、あるいはわからないとしても、こっちがやりたいことをやるためにはどうしたらいいでしょうか。
牧衷 これが難しい。ことは簡単ですが。じっと我慢の子でいる。絶対失敗するから。
質問者 そう言うと思ったんだ。(笑い)
牧衷 今そういうふうになっているについてはそうなっているだけの社会的根拠があるんですよ。その現れ方はけしからんけれども、でももし教育がもっと逆のことを考えてみる。もし、もっと教室で担任の先生が本当に自由で創造的な授業が出来るようにするということを考えればやっぱり校長の権限が増えることが必要になってしまうでしょ。現場で授業をしている先生方と直接につながりのある管理職が先生たちにその能力を発揮してくれるような職場を作るというということがどうしても必要になる。そうしたら校長を増やさなければそんなこと出来ない。文部省が創造性のある授業をと文部省が言い出したからには校長の権限が増えるということとがワンセットになっているわけです。
質問者 道理はあっている。
牧衷 道理はあっているけど中身が合わない。中身が合わないのは道理がわかってない奴がここにいるからだ。でもこれは道理なんですからこの道理のわからない奴がここにいてうまくいくわけないんだから、必ず失敗します。
質問者 失敗するまで待つしかないんですか。
牧衷 失敗するまで待つしかないんです。でもそんなに待たなくてもいいって。
質問者 経営目標は増えているけど、教育委員会から言われていることをシャカリキでやっているだけなんです。でもそれはただ待つしかないんですか。おれは好きにやっているけど、みんなやらされていて
牧衷 そんなに長い間待っていなくていいと思います。これズーッともっともっとひどくなるんじゃないかと思うと、登校拒否を起こしたくなるんだけど、まあ3年の辛抱よ。というのは、実は前例があるからなんです。一時期企業でもそういうバカな管理をやったことがあるんです。それはすぐに馬脚を現しまして、これはダメだということになって、全部変わりました。今でもそれやっているメチャクチャ経営者いますけどね。でも大部分の経営者はそれやらなくなっちゃった。目標管理といってお仕着せの目標与えてさあやれと言って尻たたいて、出来ない奴を悪し様に言ってやった時期があったんです。でもそれをやったらどういうことが起こったかというと全員がやる気なくしちゃったんです。全員がいい加減になっちゃったんです。でもわかるんです。
質問者 企業はダメなら切り替えもはやいですよね。今大阪では教育の評定が自己評定で、目標を書いて校長と面談して、去年2回とも校長はおれとの面談をしなかったけど、(笑い)それで自己評価というのは企業のものまねでしょ。で企業は実験結果が出てやめだしているのに、大阪府は今年からが本実施なんですよ。お役所は3年よりずっと行かなければ変わらないんじゃないかと思うんだけど。
牧衷 タイムラグがあるからね。後から行っているだけ利口になる。企業の方は出ているけれども、まだそれは一般に浸透してないです。まだ一般に浸透してなければだめです。まだ新聞記者は目標管理と言ったときに依然としてノルマを与えて尻をひっぱたくことだと思っているんです。企業家の中では常識です。企業家の中では常識だけれども、これがまだ世間の常識になっていない。
質問者 言い出した以上今さら引っ込みつかないんじゃないかと思うんだけど。
牧衷 これはワンセットですから、言い出したことを変更する必要は全然ないんです。校長の権限を強くしたことについて、間違いでしたという必要はないんで、校長の権限をこのように発揮しなさいという話になればいいんで。新聞記者たちがまだ尻ひっぱたくのが企業の経営管理だと思っているうちは、ダメですよ。支配と統合の話になるけれども、役人が一番気にするのは議会です。議会の議員の知識水準は新聞記者の水準より絶対に高くなりません。するとそれが世論になってしまう。役人にとっての。新聞記者あたりまで、企業の今のやり方は反省してそんなことやっているところはないんだということが浸透して、そして、それが少なくとも新聞記事で企業管理について問題になるときの常識になる。すると議員も「ああいうのは時代遅れなんだってさ」って言い出すやつが出てくる。そのタイムラグがあるんですよ。だいたい教育界っていうのは世界の最先端から10年から15年くらい遅れるよ。だけどそういう社会的実験結果が出ていることについては比較的早く修正出来る。企業だってその修正が出来るまでに3年5年の経験で修正したんじゃないんだもの。やっぱり10年15年の経験を積んでやっぱりだめだということがわかる。
質問者 修正して成功した例はあるんですか。
牧衷 たった今、校長先生一人が変われば学校はガラッと変わりますよ。いい人がなかなかいないという問題はありますよ。学校を変えた人は5人や10人すぐあげられますよ。今は過渡期なんですね。過渡期には混乱が起こるんで、この混乱はこの時期に生まれあわせたのが身の不運なんです。
世間一般が先生がどんなに忙しいか、しかもくだらない仕事で忙しいか知らないんですよ。世間一般は先生と公務員と警察官は働かずにのらくらして給料もらっていると思っているんですよ。思っているのが間違いないから、くだらないこと言って来るんですよ。勤務時間がどうとかね。ぼくは先生方に対しては同情的なんですよ。こんなに非人間的に働かされ方しているから、人間いつまでも持つものじゃない。その内に教員の反乱が起こる。教員の反乱は暴動が起こるというような反乱は起こらない。学校がもっともっと荒廃してどうしようもなくなるという反乱が起こる。もうどうにもこうにもならなくなったという話になって問題がひとつか二つかたづくという。