ガリレオとシェイクスピア

 ぼくは文学はやらないことにしているんだ。ぼくくらいたくさん本を書く人は大抵文学をうんと読んでいる。ぼくは全然読まない。
 シェイクスピアを読んだ。シェイクスピアの本のうちの4冊に「原子」atomが出てくる。『お気に召すまま』『ロメオとジュリエット』『ヘンリー4世』『 ? 』だ。シェィクスピアは芝居の台本なんだから,論文とは違って観客がわかることばで書くはずだ。しかも明らかに受けをねらっている。ということは「原子」ということばは一般大衆にとってよく知られていたことばだということがわかる。翻訳は坪内逍遙から全部調べたけれどどれも「微塵」となっている。微塵と原子じゃあ大きさが全然違う。これはイギリスの有名なシェイクスピア学者がatomに「微塵」と注釈をつけているのでみんなそれに従っている。権威あるシェイクスピア学者がわかっていない。
  シェイクスピアガリレオと同時代なんです。ガリレオの父と弟は音楽家で楽譜が残っている。それがCDになって売られている。それを聞くと何年か前,BBCとNHKでシェイクスピア劇場」という番組が放送されたけれど,その音楽とガリレオの父や弟の音楽は感じがそっくりだ。そこからガリレオシェイクスピアが同時代だということがわかる。