NHKの理科離れする教師たちの番組を見て

 11月12日(木)午後7時半~7時56分。「NHK総合テレビクローズアップ現代」で「実験が苦手──理科離れする教師たち」として、理科教育の実情を報道していました。仮説実験授業研究会会員で,学校の外で仮説実験授業の科学教室をされている平林浩さん(東京在住,元和光小学校教諭)が登場しました。番組では、もうちょっと掘り下げてほしかった気がします。
 この番組を見て、思い出したのは、戦争中の日本の英語教育です。
 日本では大東亜戦争中、英語は敵国の言葉だからといって英語教育がされませんでした。ある期間英語教育がされないとその影響は甚大です。終戦直後は、中学校で英語の時間はあっても英語の先生がいなかったのです。私の知っているある人は中学1年の時の英語は英語の先生がいないため、英語の授業は全部自習だったそうです。自習といっても中学1年生が習ってもない英語の自習が出来るはずもないので、学校では自習時間用に漫画をたくさん用意してそれを読ませていたそうです。(もちろん英語の漫画ではなく、日本語の漫画です。)中学2年になったときようやく英語の先生が確保できて、1年生と2年生が一緒に英語の授業を受けるようになったら、1年生の方ができるようになってしまったそうです。そりゃそうでしょう。2年生はもうやる気がでないでしょう。英語教育がされなかった期間があったための日本人の英語力の低下はひどいものだったと思います。私の中学のときの英語教育はひどかった。戦争直後は英語の教員不足を解消するために、高校を卒業した人に無条件で英語の教員免許を与えたと言います。英語を多少なりとも知っている人には英語の教員になってもらおうということだったのです。英語をどう教えるかなどは問題でなかったのです。
 中国では文化大革命のときに英語禁止で、今、中国の中年層が英語力ゼロ。そのために中国が被っている損失は莫大です。
 さて、今の日本。国民的レベルでの科学の学力低下。社会の損失は大きい。教えることが出来る教員が必要なだけいないのです。理科嫌いだった先生に教わる子どもは大変。
 かつて、牛乳不足になったとき、テレビでインタビューされていた人が「牛乳不足だからといって急に牛を増やせるわけではない」と言っていましたが、理科の教員不足はそれよりずっと深刻です。理数教育の充実という教育政策が出て、予算がついたところで、急に理科を教えることができる先生が続々と出てくるわけではないのです。理科の指導法のベテランは、若い人たちに授業・実験のノウハウを教えていく必要な時代になってきたように思います。これからは理科の苦手な先生が理科実験で事故を起こす可能性も大きくなっていると思います。理科教育のノウハウを伝えるシステムを考えていく必要がありそうです。