国立教育研究所研究紀要

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 国立教育研究所研究紀要第23集「学力調査(理科)の補正と分析の方法について──中学理科の真の学力と見かけの学力」という論文を板倉聖宣さんが書いています。(1960年3月)学力テストの正答率と言われているものが本当に正答率を表しているかということを問題にし、選択肢からデタラメに選んだがたまたま正答になった場合のことも考慮し、真の正答率を推定するというものです。『国立教育研究所研究紀要第27号』(1961年3月)には板倉聖宣さんの「理科学生の入試成績と在学成績──とくに新卒者と浪人の在学成績の差について──」が掲載されています。この論文は東大理Ⅰの合格者のその後の成績を追跡し、浪人中の受験勉強が入学後の成績にどのような影響があるかを論じたもので、結論は受験勉強は入学後の成績向上のために何の役にも立っていないというものです。つまり浪人することはその学生の学力向上に役に立っていないという私のように浪人した経験のあるものにはなんともつらい結論になっています。
 国際学力テストがあり、それについて論ずることが出来るのは板倉聖宣だということになってまわってきた仕事ということだったらしいです。このとき、国際理科学力テストで日本の学力は世界一ということで板倉聖宣のところに新聞社が取材に来たそうです。板倉聖宣さんはこのときの国際学力テストを作った人の学力がないことを示していることを指摘しています。(この論文にではないが)月についたロケットから降りたときに宇宙飛行士はどう感ずるかという問題があり、正解は体が軽くなったように感ずるというものですが、月に着いたロケットの中にいるときとその外に出たときの重力は変わらないので、「体が軽くなったように感ずる」ということはないのですが、問題を作った人はこれが正解だと思っていたのです。当時板倉聖宣さんは「真空のボンベと水素を詰めたボンベはどちらが重いか」という問題を作りました。こういう問題こそが国際学力テストに使うのによい問題ですが、取り上げられませんでした。問題作成者自身がこの問題に正答することができず、自分の学力がないことを自覚するのではなく、問題がよくないと判断したのではないかと思います。仮説実験授業提唱直前に板倉聖宣さんは「よい問題を作るべきだ。」と主張し、自身でそういう問題集をつくりガリ版刷りで出しています。画像はそのときのガリ版刷りの問題集。