企業管理職から見た学校

牧衷さんの講演の一部を紹介します。
以下講演
労務管理の鉄則 ── 楽,正,早,安

 労務管理の方に戻りますと,労務管理の鉄則というのがございます。

  板書  楽  正  早  安

 この順序で大事なんです。楽というのは働く人がラクということです。次の正,これは文字どおり正確ということです。不良品が出ない。早は早くということです。安は安全であります。
 労務管理の要諦は何か。
  楽 働きやすい職場を作ることだ。
  正 その次に不良品を作らない。
  早 その次に手早くできる。
  安 安全が一番しっぽに付くのが企業というものでございます。
 たとえば土木建設工事をやります。これだけの大規模な工事をすると人が何人死んで,何人が中けがして何人が小けがするかが統計的に予測できます。それはきちんと計画書の見積もりの中に入れてあります。そういう意味では非常に冷酷無惨なものでございます。何人死ぬかが統計的に出てしまうんです。こういう統計的に出るものは計画書に入れておかなければいけないんです。こういうことを聞くと,「企業というのは非人間的なところだ」とお思いになるかと思いますが,それを入れておかないと,事故があっても十分な手当が出来ないことになります。ですから入れてあるんです。そんなことがあるものだから,安全が最後になってしまうんです。保険がかかっているから。本来なら安全が一番最初でなければ困るんだけど,やっぱり土木作業というのはどうしても危険が伴うんです。あるリスクを予測してやらなければできません。土木作業で100%安全にするには何もやらないことにするしかないんです。

企業管理は人間を大切にする

 要するに,企業の管理というのは意外に人間を大事にしていることがおわかりになられたかと思います。このように人間を大事にするのが企業の経営管理の要諦でございまして,馬車馬のように働かせようというのは,企業管理の風上にも置けない考え方でございます。
 ぼくがさっき申しました,「ペーパーを50%減らす」というのは,これ時間がうんと余裕が出来ますからラクなんです。(楽)やる仕事が増えれば増えるだけ絶対に正確さに欠けるようになります。(正)過労死なんてとんでもないことが起こらないとも限らない。ぼくが民間人校長になったら,そういうことをやってみたい。「会議30%削減,ペーパーの50%削減」なんてやってみたいですね。先生方が,実際に出来るかどうか,グループになって,出来るかとどうかを検討してもらえばまずだいたい行けちゃうんじゃないか。なんかの連絡事項のためだけの職員会なんてなくていいと思うんですよ。そんなのは掲示板に貼っておいて先生方が見ればいい。そのために先生方にガンクビそろえてもらう必要性は正直言うとぼくにはありません。「それじゃあみんなが見ない」というのは正直に申せば,これはしつけが悪いですね。企業ではそういう掲示を見ないでいて「掲示見ませんでした」では通らない。掲示は見るべきものです。だから見やすいところに掲示しておけばいい。それを「見ませんでした」というものは横っ面ひっぱたかれてもしかたがない。そういうことが度重なればクビになってもしかたがないという話になります。そういうところは学校も厳しくしたっていいと思います。